さて・・・冒頭より余談で恐縮だが、敢えて述べる事をお詫びしたい。

一見すると戦況はひっくり返り士郎は『六王権』軍に絶対有利の立場になったかのように見える。

しかし、それは誤りだ。

オーテンロッゼ本人が言ったように、あくまでも『霧中放浪(ミストロード)』を破り魔力の強制搾取という楔から抜け出ただけに過ぎない。

極論すれば『霧中放浪(ミストロード)』を破ったが、だからと言って失われた魔力が完全回復する訳ではない。

現にその戦力の消耗は明らか、現状人類側で戦闘可能なのは士郎とアルトリア達英霊、肉弾戦を重視していた為魔力消耗が他の魔術師より比較的少ないバゼット、桁違いの魔力を有していたのでたまたま魔力の底が尽きなかったバルトメロイ、戦闘参加が他のメンバーより遅れていたレイ、そして魔術師でない国連軍位であろう。

凛達魔術師は魔力を軒並み失い戦力としては当てにならない。

一方、『六王権』軍はといえば司令官オーテンロッゼは未だに健在、配下も先発隊は全滅に等しい被害を受けたが主力はろくな被害を被ってはいない。

数の点で言えば現状に全く変わりはない。

その筈なのに、不利な筈のアルトリア達は言葉に出来ぬほどの安心を得て、優勢な『六王権』軍は言い知れぬほどの焦燥に支配されていた。

その予感は完全に正しいのだが。

四十三『波状』

オーテンロッゼの号令を受けて数万の『六王権』軍は士郎に襲い掛かる。

一対数万、本来ならば瞬きほどの時間で決着する戦い。

しかし、士郎に焦りはない。

相手の号令と共に士郎も詠唱を唱えていた。

「後より出でて先に断つもの(アンサラー)」

王の詠唱に応じるように床から、あるいは柱からもしくは士郎の背後の空間よりそれは姿を現した。

「ええっ!!」

「はあ!!」

あまりに非常識な光景にバゼットとセタンタが絶叫を上げる。

それは全てバゼットが切り札として使用するフラガラック。

それが数十、士郎の頭上で浮遊している。

そして士郎の拳ではなく、王国から発せられる稲妻を受けて戦神の剣が全て覚醒する。

「斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」

真名発動と同時に轟音を上げて『六王権』軍に襲い掛かる。

その様はまさしく、宝具の一斉射撃いや、制圧砲撃と呼んだ方が良いかも知れない。

相手が切り札を使っていないので、フラガラックはCランクの威力しか出ないが、それでも死者や下級死徒には十分な殺傷能力を持つ。

あっという間に先頭集団を壊滅させそこに士郎は傷口を更に広げる。

「猛り狂う雷神の鉄槌(ヴァジュラ)!」

士郎の手より放たれた鉄槌に追従するように至る所から同じ鉄槌は次々と射出され、『六王権』軍は文字通り袋叩きにされる。

更にすぐさま現れた槍を真名と共に投擲する。

「大神宣言(グングニル)!」

同時にスコールの如く『六王権』軍に降り注ぐグングニル。

たとえ一本をかわしても別方向から飛来する別の槍に貫かれ、狙われれば回避はほぼ不可能だった。

圧倒的な宝具攻撃を仕掛けたが、そうした所で、そもそも敵の数は数万、数の圧倒的な差を覆すにはいまだ至らない。一人では漏れが出るのは当然の事、側面から迂回してきた一体の死徒が士郎に肉薄、そのまま引き裂きに掛かる。

だが、それを忽然と現れた剣が防ぎ、滅多刺しにし、止めに士郎の一閃が首を跳ね飛ばす。

愚か、その一言しかない。

此処は王国、何処に目の前で主君たる王に危害が加えられるのを黙って見ている配下がいるだろうか。

しかし、迂回した死者死徒はこれだけではない。

大半は士郎に向って行き、剣弾の餌食となるが、一部が更に大きく迂回後方の味方に迫ろうとしていた。

こちらには剣群は一切反応を示す事は無かった。

剣群が己が意思で守護するのは主たる士郎のみ、他の存在にはたとえかつての担い手であろうと動く事はない。

「!!まずい」

動きを察した士郎が剣の一部を向わせようとする。

しかし、そのような心配は杞憂だった。

先発の死者が暴風の如く荒れ狂う一撃で引き裂かれたのだから。

「エミヤ殿、此処は我々に任せられよ!」

そう言うのは、二槍を構え死者を切り裂いたディルムッド。

「その通りだ!エミヤ!!後ろは余達に任せよ!!お主は安心して目の前の二十七祖を叩き潰す事に専念すればよい!」

大声というより咆哮、むしろ怒号と呼んだ方がよいか・・・を上げて『神威の車輪(ゴルティアス・ホイール)』に乗り込んだイスカンダルがまとめて『六王権』軍をひき潰す。

「だからうるさいのよ!大声あげる事しか出来ないの!あんたのその口は!!」

イスカンダルと一緒に乗り込んだレイはどうにか乗り込もうとする死者や死徒を迎撃しながらイスカンダルの声の大きさに文句を付ける。

「我々を苦しめたあの霧が失せた今、我々が休んでいる道理等ない」

ヘラクレスが大剣を振るえば当然の様に十体単位で薙ぎ払われる。

「全くよ。坊やにだけ戦わせて私達は高みの見物なんてするようじゃ英霊の名折れよ」

上空よりメディアは魔力弾を次々と投下。

盛大に『六王権』軍に吹っ飛ばされる。

「士郎!俺達がバックアップするぜ。だからこっちは何の心配はいらねえ」

セタンタはバゼットを伴い次々と『六王権』軍を餌食にしていく。

「シロウ、サクラ達には指一本とて近付けさせません。ですのでシロウは安心して前を」

メドゥーサは天馬に跨り、イスカンダルが取りこぼした死者を掃討していく。

それでも掻い潜るものもいたが、それも無駄。

何しろ最後に待つのは

「下郎、失せよ。此処は王・・・すなわちシロウと彼が認めた者だけがいる事の許された場所。貴様らがいる場所ではない!!」

アルトリアの剣の前に一体残る事無く死者は打ち倒される。

「・・・皆、ありがとう」

後方に何の憂いもない事を確認すると虎徹を床に突き刺し、今度は一本の槍を手にした。

「・・・こいつはあまり使いたくないが・・・四の五の言っている場合じゃないか」

士郎が敢えてその槍を使う事を躊躇う理由、それはこの槍の力を発動させた際のあまりの残虐性にあった。

あまりの惨たらしさに、ダインスレフとは別の意味で二度と投影しないと誓った。

しかし、『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』さらにアルトリア達の援護をもってしても圧倒的な数の暴力の前ではまだ一手少ない。

これに少しでも対抗する手段がいる以上、躊躇う訳には行かなかった。

内心の葛藤を押し殺しそれを発動させる。

「・・・串刺城塞(ガズィクル・ベイ)」

それと同時に一面に槍が出現、敵である『六王権』軍を串刺しにしてみせる。

死徒や死者である以上この程度では死なないと思われたが、串刺しにされた『六王権』軍の一部が突然全身から血を噴き出した。

中には血を噴き出す以前に身体が破裂する死者もいる。

それを見届けるや今度は別の剣を握り締める。

「あれは・・・いえ当然ですね。此処には全ての剣があるのですから」

その剣が何であるのか良く知るアルトリアが驚きの表情を浮かべ、声を発しかけるがこの世界の特性を思い出し気を取り直す。

それは一目見ても人ならざる者が鍛え上げたと確信させうる名剣。

かつてアルトリアを王と仰ぎ、最後の丘まで王に付き従った白騎士の剣。

「受けてみるか・・・太陽の写し身たる・・・もう一振りの星の聖剣を!!」

そう言うや剣より紅蓮の炎が吹き上がる。

その剣を上空に放り投げると同時に剣は虚空で回転、剣より離脱した炎は小さき、だが、確かな強さを持つ太陽となる。

「転輪する(エクスカリバー)」

再び握り締めた剣・・・円卓の騎士の一人、サー・ガウェインの剣『忠義に生きる陽光の剣(ガラティーン)』に王国より供給された魔力を最大限注ぎ込む。

振り抜かれるのはアルトリアの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』と比肩する炎の聖剣。

「勝利の剣(ガラティーン)!」

振りぬいた一閃は熱波となり、極小の太陽も死者達の頭上に落ちる。

それは一面を火の海に変えて死者も死徒も分け隔てなく焼き尽くし一握りの灰に変えた。

「おおおおお・・・」

その余波はオーテンロッゼにも及び、全身の半分近くが焼け爛れ、一部炭化している。

串刺しにされて、更には常人ならとっくにショック死に至る火傷だが、それすら既に回復しつつある。

「全く出鱈目な再生能力だな・・・まあいいか、出鱈目には、出鱈目で対抗するしかねえか!」

そう言うや『忠義に生きる陽光の剣(ガラティーン)』から新たな剣を抜く。

抜かれたのは『無毀なる湖光(アロンダイト)』。

それも怨念と憎悪に塗れた魔剣ではない、その真名が示すように波一つ無い湖の光を湛える聖剣に姿を変えて・・・いや、正確には元の姿に立ち返っている。

自身の能力上昇の幅は『忠義に生きる陽光の剣(ガラティーン)』に劣るが時間制限がない上、太陽の力が及びにくい『封印の闇』の中ではむしろ『無毀なる湖光(アロンダイト)』のほうが優れる。

「はああああ!!」

『転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)』の被害から免れた死者や死徒が士郎に迫るがそれも『無毀なる湖光(アロンダイト)』の前に一太刀で全て斬り捨てられる。

斬り捨てながら士郎は疾走、オーテンロッゼに迫る。

完全に回復したオーテンロッゼは万全を期して待ち構えたとばかりに絶対に交わせないタイミング、防げない威力で爪を振り下ろす。

しかし、それも側面から飛び込んできた大剣が阻み狙いは大きく逸れて、絶対的な隙を生じさせた。

「はっ!」

短い気合の声と共に士郎の一撃はオーテンロッゼを胴斬りにする。

当然だがこれで終わる筈はない。

次に握られたのは『破滅と災い呼ぶ黄金の剣(ダインスレフ)』。

かつて投影で創り上げた時にはその破滅の能力故に士郎ですら握る事は出来ず、投影すら諦めた曰く付きの剣であったが、今回はその心配は皆無。

『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』の中において主に害なす能力は全て無効化されている。

だからこそ士郎は思う存分この剣も振える。

今度は縦にオーテンロッゼに斬り付ける。

「が、ぐがああ」

当然だが士郎は止まらない。

続けて、

「大なる激情(モラルタ)!」

ディルムッドの剣を立て続けに二発叩き込む。

そして止めとばかりに、跳躍しながら手に握られた五又槍を投擲した。

「轟く五星(ブリューナク)!」

当然だが、ブリューナクはあちらこちらから姿を現し、オーテンロッゼの身体を原型を留めぬを通り越し、完全に消滅させる勢いで貫き、すり潰し、消し飛ばす。

ブリューナクの余波は辺りに波及し、勢いの衰える事無くブリューナクは周辺の僅かに残っていた死者、死徒をついでに掃討していく。

『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』発動時には数万いた『六王権』軍は『斬り抉る戦神の剣(フラガラック)』、『猛り狂う雷神の鉄槌(ヴァジュラ)』、『大神宣言(グングニル)』、『串刺城塞(ガズィクル・ベイ)』『転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)』、『轟く五星(ブリューナク)』でその大半が掃討され、残りもアルトリア達の手で全滅した。

だが、それでもオーテンロッゼは

「き、貴様ぁぁぁぁ・・・」

その再生に翳りは見えない。

「どうなっているんだこいつの再生能力・・・あそこまで潰してまだ再生できるのか」

あまりの理不尽めいた再生力に士郎も脱力めいた言葉を残す。

此処までくれば並みの宝具攻撃では駄目と見るしかない。

対人では過剰火力である対軍、もしくは対城、最悪ならば対界クラス、それもAランク以上のを再生の暇を僅かたりとも与える事無く、連続で叩き込み、細胞一片すら残す事無く消滅させるしかない。

「んじゃ俺らの出番か」

いつの間にかセタンタが士郎の傍らに立っている。

「やれやれ、全くしぶとい奴だのう」

髭をしごきながら、言葉だけはうんざりと、口調は心底楽しそうに『神威の車輪(ゴルティアス・ホイール)』を操るイスカンダルと、

「笑い事ではないでしょう征服王」

その隣では天馬に跨るメドゥーサが上空で待機する。

「全く、これだから野蛮な男は・・・」

さらに隣で浮遊するメディアも愚痴を零す

「ここまでの再生を可能とするならばこちらも総力を結集するしかないだろう」

ヘラクレスが巌の如く進み出る。

「幸い、雑魚は全て仕留めた。後ろを気にする必要もあるまい」

ディルムッドが静かに歩み寄る。

「ディルムッド?みんなは」

「リン達ならバゼット、夢魔が念の為に護衛に回ってもらっています」

最後に当然のように士郎の直ぐ隣にアルトリアが立つ。

「がぁぁぁ・・・ぐぅぅぅぅ・・・ふざけおって舐めおって・・・貴様らはこの地で朽ち果てる事が既に確定されておる!何ゆえに足掻く!!もがく!貴様らは私の栄光の礎となり屍を晒しておれば良いのだぁああああ!」

オーテンロッゼが勝手に思い描いていた未来図が、不当に覆された事に怒りの咆哮を上げて突進する。

それを迎え撃ったのはディルムッド。

「はああああ!!」

猛獣の如き一撃を紙一重でかわし狙うのはオーテンロッゼのアキレス腱。

スライディングでオーテンロッゼの股下を潜り抜け『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』が両足のアキレス腱を断ち切り、背後より

「小なる激情(ベガルタ)!大なる激情(モラルタ)!」

「がばぁ!」

双剣の一撃で切り裂き、それと同時に全速力でその場から離脱する。

それを追跡したいオーテンロッゼだったが、背中の傷の再生は順調にも拘らず、アキレス腱の回復が異様に遅い、いや極めて遅い事に怪訝な表情を作る。

当然といえば当然。

いかに再生能力が上がっても『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』で受けた傷にそんな事は無力。

槍か担い手を滅ぼさない限り再生する事は決して無い。

むしろ少しずつでも傷が治癒している事が驚愕に等しい。

おそらく、オーテンロッゼの体内で『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』の呪いと『赤月の涙(スカーレット・ティアー)』の再生能力が拮抗しているのだろう。

思わぬ事態に、しばし足掻いていたオーテンロッゼだったが、不意に前方を見てその表情を引きつらせる。

何故ならばオーテンロッゼの前方にいるのは弓を番えるヘラクレス!

「射殺す百頭(ナインライブス)!」

一点に集約された矢がオーテンロッゼのどてっぱらに風穴を開ける。

「まだよ!今までの鬱憤此処でまとめて返してあげるわ!!」

今度は頭上より魔力弾がオーテンロッゼただ一人に降り注ぎ、それが終わるや

「灰すらも・・・残さない!」

極大の魔力砲が遠慮も何もなく叩き込まれる。

「うっひゃあ、派手にやってるねぇ、俺の出番残ってるか?」

「残っておるであろう、あれの生き汚さ、貴様とて良く判っていよう。で、この高さでいいのか?」

そう言い合うのは戦車に乗り込み、上空からその戦況を見つめるセタンタとイスカンダル。

「おう!文句も問題もねえ。感謝するぜ!」

セタンタは既に足で自らの槍を握り締めている。

「んじゃ、先にやっているぜ!!」

そう言って戦車から飛び出し虚空に身を投げ出す。

見ればやはりオーテンロッゼは未だ健在、再生も始まりつつある。

「させねえよ!!貫き穿つ(ゲイ)」

素早く角度調整したセタンタの身体が反り限界までその力を溜める。

「死雷の槍(ボルグ)!」

撃ち放たれた真紅の雷がオーテンロッゼの脳天を貫き頭部を半分蒸発させて後方斜めに突き刺さる。

素早く着地したセタンタは、槍を回収するやディルムッドと同じく全速力で離脱した。

その同時に上空より二対の流星がオーテンロッゼに襲い掛かる。

「はーーーっはっはっはっ!ここで終わりと思うな!遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)!!」

「借りをここで全て返します!騎英の手綱(ベルレフォーン)!!」

「――――――――!!」

左右から時間差で神牛、戦車、そして天馬に突っ込まれて声なき咆哮を上げる。

そして・・・最後に残されたアルトリアは既に自身の聖剣を構えている。

「アルトリア、こいつで決めるぞ呼吸を合わせる」

そう言って士郎がアルトリアの隣に立つ、一本の剣を握り締めて。

それを見た瞬間、アルトリアはあまりの事に硬直した。

それを見て士郎はと言えば軽く笑うだけ。

「驚く事でもないさ。言っただろ?ここにはあらゆる剣が集うって。だからこういった可能性もあるって事さ。エクスカリバーが聖剣ではなく、魔剣として語られる歴史が」

士郎の手に握られているのは紛れもなくエクスカリバー、但しその剣は黒く、負の感情に満ちた魔力を帯びている。

「いくぞ!!」

「!はい!」

士郎とアルトリア、二人の剣から光と闇が満ちる。

「はああああああ!!」

「おおおおおおお!」

左右対称で同じ構えを取る。

無論真名も同じそれを唱え

『約束された(エクス)』

同じタイミングで振り下ろした。

『勝利の剣(カリバー)!!』

光と闇、違いはあれども聖剣、魔剣としては最高位を誇る一撃をオーテンロッゼはなす術無く受ける。

(な、なぜだ・・・・)

今までの猛攻に加え、二つのエクスカリバーでオーテンロッゼの肉体は髪一本、血一滴、細胞一欠けらすら残す事無く消滅していく。

(わ、私は・・・最高側近となる筈ではなかったのか・・・こ、このような・・・さい・・ご・・・予定に・・・ない・・・)

消滅までの僅かな時間、オーテンロッゼは思考する。

(こ、このような・・・こと・・・このような・・・ことが・・・イヤダ・・・??)

自身の思考に異物を感じ怪訝になる。

(イヤダ、シニタクナイ・・・な、なんだ・・・貴様は・・・ウルサイ、モウオマエ、ヨウハナイ・・・な、なんだと・・・一体、き・・・ざ・・・まぁ・・・サイゴニ、ワレノタテニナレ)

思考はその異物に支配される。

(ヤクタタズガキエタラ、アタラシイカラダテニイレル。ドイツモコイツモツヨソウダカラマヨウナ・・・)









光と闇が消えた時、そこにオーテンロッゼの身体は存在していなかった。

聖剣、魔剣二つのエクスカリバーの一撃で完全に消滅した。

「完全に潰したか・・・」

そう言って魔剣エクスカリバーを床に突き刺す。

「どうやら今度こそ完全に消滅させたみたいね。『白翼公』の魔力は微塵も感じられないわ」

着地したメディアが断言する。

メディアの断言に一堂に安堵の空気が満ちる。

それは士郎も同じだった。

だが、それも直ぐにかき消される。

(ヤハリ・・・オマエガイイ。イチバンイキガイイ)

「!!」

脳の直接響いた謎の声、その声に思わず振り向くと、眼前に赤いビー玉のような球体がすごい速度で、士郎に接近しようとしていた。

いや正確には士郎の口内、体内に侵入しようとしている。

(フフフ・・・コンナニモイキガヨクツヨイタマシイヒサシブリダ。ゴチソウダ)

アルトリア達もこの異変に気付いていない。

タイミングも間に合いそうに無く、それは何も障害なく士郎の中に入り込もうとしていた。

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